いにしえの時代から人々の暮らしを脅かし、多くの尊い命を嵐のように連れ去ってしまう「疫病」。

それは、2003年頃に流行したSARS(サーズ=重症急性呼吸器症候群)や、2020年現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とて例外ではなく、文明の発達した現代においても猛威を振るう存在です。

日本人は古くから、人の力だけではどうにもならない自然災害以外にも、疫病の終息を神様に祈りながら、それらの苦しみを乗り越えてきた歴史があります。
新型コロナウイルスの影響に、多くの人の健康や生活の営みが脅かされる今だからこそ、知っておきたい「鎮花祭(ちんかさい)」というお祭りがあります。

——神社を愛するあまり巫女になり、神道の魅力を皆様にもお伝えしている巫女ライターが、世の中に蔓延する疫病から人々を守る、春の祈りの祭祀をご紹介します。

目次

  • 「鎮花祭(ちんかさい)」って何?
  • 主にどの神社で行われているの?
  • 「恩恵」をくださるだけが神様ではない
  • 慌てず騒がず心を鎮めよう!

「鎮花祭(ちんかさい)」って何?

 


主に3月や4月に行われるこのお祭りは、春になり、花が飛散するとともに疫神(えきしん=災疫の御霊)が各地に広がっていくのを鎮める目的で行われています。

「生命力」や「霊力」を象徴するかのような存在である「花」が散る姿というのは、昔の人々の心に淋しさと共に、恐れを抱かせるものだったのかもしれません。
この時期に、疫病が流行りやすいということもあり、その災いを祓いたいという一心で行われていた神事なのです。

「花鎮祭(はなしずめまつり)」とも呼ばれるこのお祭りは、行われている神社が限られているため、あまり耳馴染みのない方が多いかもしれませんね。

さらに、人々の間では「薬祭り」とも言われるようになり、日本全国の薬業関係者が集ってさまざまな医薬品が奉納されるのだとか。
特殊な神饌(しんせん=神様へのお供え物)として、薬草のスイカズラや百合根が供えられるのも特徴です。

「病」という姿の見えない脅威から、私たちの心や体を守っていただく大切な祈りの神事が、今に至るまで受け継がれてきた事実……。
それは、まさしく人々の安寧が壊されかけている今だからこそ、知っておきたい「祈り」なのではないでしょうか。

主にどの神社で行われているの?

 

このお祭りの起源は、『神祇令(じんぎりょう)』という、国が公的に定めた神社における祭祀をまとめたものの中に含まれています。
それによると、旧暦で言うところの3月の祭祀として定められているのですが、新暦になった現代では4月に行われていることが多いようです。

そもそも、この行事は「宮中」における行事だったものが、奈良県にある大神(おおみわ)神社とその摂社である狭井(さい)神社で、国家の祭祀として行われるようになりました。

大神神社にお祀りされているのは「大物主大神(おおものぬしのおおかみ)」という、国造りの神様であり、人間の生活の守護神として信仰を集めているお方。
この神様は、災をなす精霊をも鎮める力を持ち、かつて崇神天皇の御代に疫病を鎮めたという言い伝えがあります。

また、狭井神社にはその荒魂(あらみたま)が奉斎されていることから、この二社で国を代表する疫病除けのお祭りが斎行されるようになったわけです。

その他にも、神社によっては同じ意味の祭祀を、それぞれに行っている場合があります。京都の今宮神社では「やすらい祭り」という名称になっていますし、埼玉県の氷川神社でも「鎮花祭」が行われます。

「恩恵」をくださるだけが神様ではない

 


人々に災いをもたらす御霊(ごりょう)という霊鬼的な存在を鎮めることで、世の中に平穏を取り戻し、繁栄を願う信仰のことを、「御霊信仰」と言うのですが、このお祭りもそのひとつ。
つまり、人の力で制御することが難しい存在に対する、「お願いですから、お鎮まりください。一刻も早く、日常が戻りますように……」という、切なる願いが込められているのですね。

ここ数年は「パワースポット」という言葉が前面に押し出されるようになったこともあり、私たちがうっかり忘れてしまいがちなことなのかもしれませんが……。
神様というのは、そもそも私たちに「恩恵」を与えてくださるだけの存在ではありません。

人々の心や生活ぶりが、傲慢になったり横暴になったりするたびに、それを諫めるかのように厳しい姿で現れることもあるのです。
これは、神様の荒々しい魂と書いて「荒魂(あらみたま)」とも言われますね。

その「怒り」のようなものは、時に自然災害や、疫病という形で人々に降りかかり、私たちに何か大切なことを考えさせようとしているかのようにも思えます。

慌てず騒がず心を鎮めよう!

 


2020年の春、猛威を振るっている「新型コロナウイルス感染症」のような病の前に、私たちの生活は大きく混乱し、心は不安に包まれています。
しかし、この病の存在も、私たちはそこから何かを学ぶために「意味」を考えていくべきなのではないでしょうか。

何かを改めるべきときや、考えてみる必要があるとき……。神様は、私たちに「困難」を与えることがあるからです。

いたずらに不安を煽り合ったり、自分のことばかりで人をないがしろにしたりするのではなく。
互いに思いやりながら、今の自分にできることを丁寧にこなし、なんとか明るく元気に生きていく努力をするよりほかないのです。

そして、その後はただひたすら、この災いが終息することを神様に祈るのみ。無闇に慌てたり騒いだりせずに、人の体や心の強さを信じて、前を向いていきましょう!
病に立ち向かう強い気持ちだけは、決して失わないようにしながら……。

平日はフリーライター、休日に巫女としてご奉仕。
神社・神道・生き方・心理学・自己分析・心について記事を執筆。
すべての人が前向きに、自分らしく生きるために大切なことを伝えている。
巫女ライターとしては、「書くこと」を通じて神様へのご奉仕を形にすべく、神道・神社・神様の心の本質を伝えることを使命とする。

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